はじめに|「大人になる前に」訪れる心のつまずき
高校生は思春期の終盤に差し掛かり、自我や人生観が一気に発達する時期です。
同時に、「自分は何者か」「将来どうするのか」という大きな問いに向き合う必要もあります。
この時期に生じる不登校は、本人の価値観や進路の悩み、自立への不安、人間関係のストレスなどが重なり合い、複雑化・長期化しやすいのが特徴です。
高校生の不登校が生まれる主な背景とは?
✅ 進学・就職への強いプレッシャー
- 大学受験・専門進学・就職の選択に迫られる
- 将来に対して「希望が持てない」「選べない」不安
- 「親の期待」と「自分の本音」とのズレ
✅ 高校独特の人間関係の難しさ
- 自由度が高くなる分、距離感や空気を読む力が必要に
- クラス替えや部活動で孤立感が強まることも
- SNSを介した関係トラブル(既読スルー・仲間外れ)
✅ 自己肯定感の低下と孤立
- 「頑張れない自分」を責める
- 比較や評価が強くなり「どうせ無理」とあきらめに変わる
- 親や教師にも相談できず、ひとりで抱え込みがち
不登校につながりやすいサイン
- 授業・通学への無気力(遅刻や早退が増える)
- 定期テストや課題への極端なプレッシャー
- SNSやネットゲームへの過剰な没入
- 家族との会話の減少・反応の変化
- 睡眠障害や食欲の低下、体調不良の訴えが増える
保護者ができる対応|「なぜ行かないのか」より「何に困っているのか」を聞く
❌避けたい対応
- 「高校は自己責任でしょ」と突き放す
- 「将来どうするの?」とプレッシャーをかける
- 「せっかく入った高校なんだから続けなさい」と決めつける
✅支援のポイント
1. “将来”より“今の感情”に寄り添う
→ 「何がしんどい?」「どんなことが不安?」と感情を受け止める姿勢が大切。
2. 一度立ち止まることを肯定する
→ 「休んでも大丈夫」「回復する時間も必要」と、自分のペースを取り戻す支援を。
3. 学校以外の進路も視野に
→ 通信制高校・定時制・サポート校・高卒認定試験など、柔軟な選択肢があることを伝える。
専門機関や社会資源の活用も重要
- 担任・進路指導・スクールカウンセラーとの連携
- 地域のフリースクールやNPO支援団体の利用
- 心療内科・精神科・思春期外来への相談
- 作業療法士・臨床心理士による個別支援
🌱 高校生の不登校は、「社会とつながる感覚」を取り戻すことが支援の核となります。
📚 高校生の不登校を支える理解と支援のためのおすすめ書籍 3選
高校生の不登校には、進路や人間関係、心理的な葛藤など多くの背景があり、家庭や支援者の視野を広げる知見が求められます。以下の書籍は、いずれも実際の声や支援実践に基づく内容で、高校生の不登校理解に非常に役立ちます。
① 『学校に行きたくない君へ』
編集:全国不登校新聞社/ポプラ社 発行📖書籍紹介
この本は、実際に不登校を経験した若者たちの声をもとに作られた1冊です。
一方的な説教や励ましではなく、「そのままでいい」「あなたのままで大丈夫」といった言葉が届く構成になっており、読者が安心してページをめくれるよう工夫されています。
さまざまな年齢・背景を持つ当事者のインタビューが掲載されているため、高校生だけでなく、保護者や支援者の視点からも深い気づきが得られます。
📌記事との関連性
「自分だけが取り残されている」と感じやすい高校生にとって、同じように悩んだ人の言葉に触れることは大きな安心になります。
不登校の“孤独”や“将来への不安”に寄り添う内容は、記事内で触れた「共感的な支援」の実例として最適です。
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② 『私たちも不登校だった』
著:江川紹子/文藝春秋
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📖書籍紹介
本書は、様々な有名人・文化人たちが語る「不登校だった過去」についてまとめた対話・エッセイ集です。
どのエピソードもリアルで、決して順調な道のりではなかったからこそ、現在に至るまでの過程に説得力があります。
「不登校=失敗」ではなく、その後の人生の歩みがそれぞれにあるというメッセージが込められています。
📌記事との関連性
進学や就職を目前に控える高校生にとって、「不登校だった自分に未来はあるのか」という不安は非常に大きなものです。
この本に登場する人々のエピソードは、その不安に対し「大丈夫、道はひとつではない」と優しく伝えてくれます。
記事の「進路への不安と自己肯定感の低下」に具体的な補足として有効です。
③ 『誰にも頼れない 不登校の子の親のための本』
著:野々はなこ/あさ出版
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📖書籍紹介
この本は、自身の子どもが不登校になった著者が、親としての戸惑いや葛藤を正直に綴りつつ、どう乗り越えてきたかを丁寧に伝えてくれます。
専門用語や理論だけでなく、日々の声かけや見守り方など、親にとって実践的なヒントが数多く詰まっています。
「親がつらいとき、どうすればいいか」への答えも含まれており、心の支えになる一冊です。
📌記事との関連性
高校生の不登校では、親との距離感や信頼関係の揺らぎが大きく影響します。
この本の内容は、記事中で紹介した「家庭での関わり方」や「共感的な見守り」に通じており、保護者向けの補助教材として非常に有効です。
まとめ|「進学できるか」より「安心して生きていけるか」
高校生の不登校は、大人になる一歩手前の自立のプロセスの中で、悩みや葛藤が噴き出した結果でもあります。
「どうすれば前に進めるか」よりも、まずは「ここで休んでいい」と伝えること。
家庭がその心のセーフティネットになることで、子どもは自分なりのペースで再び歩き出す力を育てていけます。
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